プレゼンテーション 文章力

もしも桃太郎が大人も楽しめる文学作品だったら

童話 桃太郎 をアレンジしました。

大人が感動できるように、原作で語られなかった心理描写や旅の場面を詳細に描いています。

 

 

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昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行くのが日課です。

ある日、川辺で洗濯をしていたおばあさんは川上から流れてくる大きな桃に気がつきました。

姿形は桃ですが、大きさは西瓜ほどもある異様な果物に、洗濯の手も止まって釘付けになりました。

やがて、近くまで寄ってきた桃を手繰り寄せ、洗濯物の側に置きました。

少々荷物にはなりますが、お土産に持ち帰ろうと決めたからです。

 

夕方、山から帰ってきたおじいさんは、居間に鎮座する大きな桃に驚きました。

平凡だった毎日に突如現れた夢のような存在に、二人はいたく興奮し、包丁を手に取り目を見合わせました。

そんな、桃から目を離した瞬間でした。

桃は自ら快音を鳴らして真っ二つに割れ、勇ましい泣き声とともに赤ん坊が姿を現しました。

次々と目の前に広がる不思議な光景に、しばらく反応ができずにおりましたが、少し遅れて、老夫婦も声を出して腰を抜かしました。

きっと、子宝に恵まれなかった二人に神が授けてくれた贈り物だったのでしょう。

二人は迷わず育てる決断をし、泣き疲れた瞳で見つめる我が子を「桃太郎」と名付けました。

 

この物語は、桃から生まれた桃太郎が、成長して村を救う旅に出て、道中かけがえの無い仲間たちと出会い、強敵と対峙し更なる成長を遂げる冒険譚です。

 

桃太郎は、幼少期から周囲の子たちと比べて体格に恵まれ、相撲では敵なしに強くなり、村中を探しても彼に敵う者はいないほどでした。

一方で、慈しんで育てられたからこその優しさも際立っており、両親への親孝行を常に考える優しい少年でもありました。

芝刈りも洗濯も、いつの間にか桃太郎の仕事になり、村の困りごとも積極的に助けるようにしていました。

そんな折、桃太郎は村人から、海外に恐ろしい島がある話を聞きます。

遠い海の向こうの鬼ヶ島では、おどろおどろしい鬼どもが強固な城に住んでいて、方々の国から掠め(かすめ)とった宝物を溜め込んでいるらしいのです。

桃太郎は何としてでも鬼ヶ島へ行って自分の力を試したいと思いました。

親元を離れる心苦しさはありましたが、鬼征伐の願望が勝ち、両親へ自らの決心を打ち明けました。

おじいさんとおばあさんは、たくましく成長した我が子の姿に感動し、快く受け入れました。

そして出発の朝、遠方への長旅を案じたおばあさんは栄養価の高い吉備団子を、おじいさんは鬼との戦いに備えて侍のような陣羽織と刀を持たせました。

一層勇敢になった出立ちには、鬼を気の毒に思うほどの頼もしさがあります。

悠然と門を出た勇者の後ろ姿を、老夫婦はいつまでも見送っていました。

 

桃太郎は、旅の中で大切な出会いを経験します。

村から大分離れた山奥で、一番初めに声をかけてきたのは犬でした。

奇天烈な格好で迷いなく進む青年が、どうしても気になってしまったからです。

行き先を尋ねると、ここから遥か遠い鬼ヶ島だと答えるではありませんか。

益々興味がわいた犬は、お供させてくれないかと申し出て、桃太郎はそれを受け入れました。

そして仲間の証にと、大切に食べてきた吉備団子を一つ渡したのでした。

道を闊歩する姿に気を取られたのは犬だけではありません。

矢継ぎ早に、猿、雉も彼に声をかけ、すぐさま魅了されました。

桃太郎は、犬同様に彼らを仲間にすると、吉備団子を一つずつあげました。

賑やかになった一行がしばらく進むと、おあつらえむきに一艘の小舟が置いてある海辺に到着しました。

彼らは協力して、それぞれが漕ぎ手、舵取り、物見となり、矢を射る速度で海上を走っていきました。

1時間も走ったころ、航路を眺めていた雉が島を見つけて騒ぎ出しました。

一同、遠い海の果てに薄黒い島を認識します。

評判に違わぬ様相で、鉄(くろがね)の門前には、腕を組んでいる鬼の兵隊も見えます。

一人と三匹は、とうとう鬼との戦線まで辿り着いたのです。

 

最後の決戦が始まります。

船から降りた一行は、大声で名乗って正面から勝負を挑みました。

すると、大勢の家来を引き連れた敵の大将が城の奥から姿を現しました。

桃太郎の倍近くの背丈から鋭い眼光で睨んでいます。

また、彼らは一様に、鈍く光る鉄の棒を振り回して、望まない来客へ向けて敵意を強調します。

桃太郎たちは息つく間も無く鬼たちに囲まれてしまいましたが、全く怯まず間合いに入っていきます。

雉は鬼の大きな眼を突き(つつき)、犬は巨躯の向こう脛(ずね)に体当たりし、猿は首元に飛びついて顔面を引っ掻き回しました。

大将同士は、鉄の棒と刀で鍔迫り合い(つばぜりあい)を繰り広げました。

やがて刀が優位に立ち、刃(やいば)が首元に迫るとき、桃太郎は投降を迫りました。

観念した鬼たちは、これまで働いた悪事を謝罪し、人間から奪った宝物を返還しました。

桃太郎たちは鬼の征伐に成功したのです。

宝物は全て荷車に乗せて、鬼ヶ島を後にしました。

荷台は山となったため、往路の何倍も過酷な移動となりました。

全員で荷車を運んでいきます。

犬が先に立って車を引き、猿と桃太郎が後ろから押す。

雉も綱を咥えて力添えをします。

漸く(ようやく)3匹と出会った山を通り過ぎる頃、桃太郎はふと気がつきました。

この大荷物は間違いなく、一人では持ち帰れなかったと。

元より、自分だけでは鬼たちに勝てたかどうか怪しかったのではないかと。

海の果ての鬼ヶ島に辿り着けたのも、力を合わせたからだと。

仲間の大切さ、協力して得られる力の強さを、この身を持って理解しました。

そして、この強さは村のみんなや両親などの尊い存在を守るためにあるのだとも分かりました。

大人になった15歳の少年は、ちょうど3つ残っていた吉備団子を3匹に1つずつ渡し、最後の力走を鼓舞しました。

 

老夫婦は我が子の凱旋を一番に喜びました。

桃から生まれた赤子が精悍な顔つきになり、仲間と共に村を救う以上の幸せはありません。

かねてから力の強さは目立っていましたが、今回の旅では力以上の強さを身につけたのだと一行を見て分かりました。

村のみんなからは宝物献上の申し出がありましたが、一切受け取らずに満足気に笑っています。

きっと彼らを満足させるのは金品ではないのでしょう。

せめてもの労いをしたいおばあさんは、団子を作るために川へ水を汲みにいきました。

美味しそうに食べる顔が見たいと一生懸命になる彼女には、上流から何が流れてきても、もう気付くことはありません。

桶の水面には、上空まで澄み渡る青さが反射していました。

 

めでたし、めでたし

 

 

 

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朗読した動画もあります。
ご覧いただけると嬉しいです。

 

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