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貴重な経験でした
この度、裁判員制度に選出され、東京地方裁判所にて麻薬密売事件の公判から評議を行い、判決を見届けてきました。
選ばれた当初は自分に務まるのかと不安な気持ちがありましたが、終わってみれば、裁判員4番としての役割が終わるのを寂しく思うほど有意義な時間でした。
選出の確率は全有権者の0.01%程度と高くはないのですが、誰もに可能性があります。
ある日突然裁判所から郵便物が届くのでその時は煙たがらずに積極的に参加していただきたいです。
フィクションの世界とは違った、リアルで濃厚な人間ドラマに、3Dで介入でき、判決に関われるのは、またとない機会です。
今回は自らの体験をシェアし、裁判がもたらした示唆と裁判員参加の有益性をお伝えします。
裁判員の仕事
突如自宅に届いた郵便物には、裁判員の候補に選ばれた旨と説明会(抽選会を兼ねる)の案内が書かれていました。
【抽選まで】
私の時は東京地裁に30〜40人くらいが集まり、制度の説明や事件の概要を知らされて、改めて受けられるかどうかを問われました。
※万が一事件の関係者だったり、ショッキングな事件で遠慮したくなったりした場合はこの時に降ります。
(悲惨な証拠などはなるべく見せないように裁判所も配慮しているようですが)
その後、残った参加者で抽選が行われ、選ばれた6人が裁判員になります。
不選出の場合はここで帰宅ですが、日当もありますし、裁判官や検事、弁護士の話が聞けるので損した気分にはなりにくいと思います。
選出メンバーはそのまま裁判長に連れられ、法廷の入り方の練習や評議室や控え室などの設備の説明を受けます。
この写真は裁判所HPより拝借しています。
正にこのままでした。
写真左側の高くなっているエリアが裁判官の席です。
中央に裁判長、両脇に裁判官、その隣に裁判員が3人ずつ座ります。
【公判日】
公判の日は施錠された密室となり、声が少し反響する小ホールのような構造なので重厚な雰囲気を作り出します。
シンプルな什器と役割通りの振る舞いをする役者たちのおかげで、演劇を見ている錯覚に陥ります。
写真でもイメージできると思いますが、被告や検察、弁護士とはかなり近いです
私は検察側(写真奥)側にいましたが検察官が弁護人へ送る冷ややかな視線や被告人の供述の矛盾に迫る表情を身近に見られて興奮しました。
テレビドラマでは数十分で終わる裁判も現実ではかなりの長丁場です。
特に、裁判員裁判は重大な刑事事件ですから、丸一日以上、次から次へと証拠品が出てきて、証人が出てきて、尋問されて、目が回ります。
全て集中して見て、手元のノートに事件を整理して、矛盾点や追求したい部分を実際に被告人や証人に質問します。
見てるだけではなく、参加できるのです。
事件の真相に迫れないかと手に汗握ります。
法律の素人でも、一生懸命に向き合うと色々出てくるものです。
検察官には叶いませんが、被告人の表情が変わる瞬間を作り出せました。
【評議】
一通り審議が終わると、裁判長と裁判官、裁判員は評議を行います。
有罪か無罪か、有罪の場合はどのような罪になるのかを決定します。
こんな部屋です(裁判所HPより)。
評議にも1日以上かかりました。
懲役何年にするとか、罰金はいくらにするとか、全員の考えはなかなか一致しませんからね。
評議内容に関しては守秘義務があるので言えませんが、裁判員同士の意見のぶつかり合いはあります。
ちなみに一番うるさかったのはダントツで私です。
すぐ熱くなる性格は困りものですが、議論は冷静です。
勝負を決める「話術」
犯罪に縁のないあなたには接することのない世界だからこそ、触れてみればで価値観が変わるかもしれません。
極悪人として罪を裁かれる直前の被告人が「被告人、最後に自由に述べよ」と裁判長に促されて何を話すのか気になりませんか?
過ちを犯してしまった愛する家族の罪を軽くするために証言台に立って、涙を流しながら何を言うのか。
限られた時間の中で正しい罪を引き出すにはどう攻めるのか。
裁判官の同情を引くにはどんな作戦が有効なのか。
裁判には「論理と語彙」のヒントが多くありました。
裁判は証拠と証言が全てです。
情状酌量と呼ばれる罪を軽くする尺度は弁論バトルを目の当たりにした聴衆の評価とも取れるのです。
被告人の感動スピーチに涙して、刑を軽くしたがる人もいますし、被害者に同情して重くしたい人もいます。
分厚い六法全書が罪を裁いているようでその実は、人は人で裁いているのだと感じました。
ハマりそうなので、きっとそのうち傍聴に行くと思います。