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残念な量産型自己紹介
あなたは、最近いつ自己紹介をしましたか?
部署異動での挨拶、初めて商談をするお客さん、3対3の成人男女の飲み会など、思い出せる範囲でも誰かに自分を説明しているはずです。
人生で最も行うプレゼンテーションが自己紹介でしょう。
僅かな時間に自分を売り込めるか否かで、その後のビジネスや人間関係に大きな影響を与えます。それなのに、日本の教育では自己紹介の仕方を教えません。だから急に求められると困るのです。
例えば、
こんな自己紹介、見かけますよね。
出身を言って、血液型、あだ名、あとは、趣味や特技、星座なんかでしょうか。この類の話をする方が非常に多いです。順番に自己紹介をする場面で、最初の人がこのスタイルだと、延々と出身地&血液型紹介が続いてしまいます。
その情報、聴く人たちは本当に欲してますか?これではその人の魅力が伝わりません。非常に勿体ない。
今回は、どうやったら印象に残る自分をプレゼンテーションできるか、『ストーリーテリング』という万能な論理を紹介して解説します。
この自己紹介が良くない点は、情報がぶつ切りになってしまっているところです。福岡出身、O型、ブルース君とプロフィールを並べているだけなんです。
この後に天秤座で、冬キャンプが好きで、トライアスロンが得意なんて並べたら、最初の方に言った内容は忘れ去られてしまうでしょう。
多分“ブルースリーに似ている人”くらいの認識になります。
もとより、情報を羅列してしまうのは本人が、何を伝えたら良いかがわからないからです。とりあえず思いつく限りの自分の個性を吐き出しているだけです。血液型を言うのは献血ルームだけで十分です。
では、どうしたらいいのか。
物語で話せばいいのです。物語で話す話法、「ストーリーテリング」を使えば、言いたい情報が整理されて、相手の記憶に残る伝え方ができるようになります。
ストーリーテリングとは
ストーリーテリングを解説するために、今から映画の話をします。
映画はお好きですか?私は休日自宅でのD V D鑑賞に至福を感じます。映画、特にハリウッド映画の展開がストーリーテリングなんです。
洋画ならなんでもいいのですが、例えば、「スパイダーマン」。
ご覧になっていない方のためにあらすじを言います。
物語は、冴えない青年ピーターの日常から始まります。幼なじみのヒロインM Jに想いを伝えられない奥手な性格で、イジメを受けている描写が冒頭にあります。言わば、物語が展開する前の背景です。
ある日、遺伝子改造された「スーパースパイダー」という特異なクモに咬まれてしまったのをきっかけに、驚異の身体能力とクモの糸を手首から出せる特殊機能を手に入れます。
その力で、街に蔓延る小悪党を懲らしめてヒーローとして認知されていくわけですが、そこに強敵グリーンゴブリンが現れます。
ニューヨークに最大の危機が訪れるのです。大トラブルです。
しかし、激闘の末、見事撃退し、スパイダーマンとして正義のために生きていく覚悟を決める!無事に解決、エンドロール、となります。
大抵の映画は突然は始まりません。まずは登場人物の生い立ちやその後のドラマへの導入となる背景を描きます。
それから、平坦には進まずになんらかのトラブルが起こります。凶悪な外敵、人物間の衝突や、自己の葛藤なんてケースもあります。
クライマックスでそれが解決し、スクリーンを見ている私たちは満足を得ます。
これが洋画の黄金パターンです。人の心を掴む映画のほとんどがこの道筋で描かれています。
これまでご覧になった印象的な作品を思い浮かべてください。当てはまるはずです。一部の邦画はこの展開ではありませんが、その類は往々にしてヒットしていません。
背景、トラブル、解決の流れがあるから人々の記憶に残ります。
もしスパイダーマンことピーターが最初から能力を手にしていて、強敵も現れずに、街の小悪党も野放しにしていたら、2時間苦痛で仕方がないでしょう。
淡々と情報を並べているだけの自己紹介もこれと同じなんです。
映画も人間も数多(あまた)存在します。その中で際立った地位を確立するには工夫が必要です。
幸い、私たちはハリウッドの名作にアクセスでき、その技法を知らず知らずのうちに体感しています。それがストーリーテリングです。
身につければ、目の前の出会いから劇的な物語が生まれる自己紹介ができるようになります。では具体的に手法を説明します。
ストーリーテリングで話そう
自己紹介におけるストーリーテリングは、映画の展開を応用して、4つの構造でできています。
背景、問題、提案、解決の4つです。映画のように2時間も伝える時間はありませんから、より論理的簡潔性が重要です。
ここでは、およそ1分間での自己紹介を想定しています。
まずは背景です。10秒ほどで仕事や 業務内容、大まかな経歴などを簡単に話します。
ここで意識しなければならないのは、背景は相手に合わせて選択するという前提です。
部署が変わっての着任の挨拶なら、
が背景になりますが、合コンの自己紹介なら
とプロフィールの切り取る角度が変わります。あなたという人物は様々な個性と魅力があって、あれもこれも話たくなる気持ちは分かりますが、印象に残るためには話題を一部分にフォーカスする勇気が大事です。
二つ目が問題です。目の前にいる相手が抱えているであろう問題を提示します。
複数の相手がいる場合はそのうちの誰かに響きそうな問題をチョイスします。
誰しも課題はありますし、何かしらのサービスを享受していますから、隙があるんです。
といった具合に問題点を指摘します。
三つ目が提案です。今の問題に対して、効果的な打ち手を持っているとアピールします。
と相手が気にしている問題と自己紹介を絡めていくのです。
最後に解決の言葉で締めます。
などと展開できます。
この4つに当てはめるだけです。
今、目の前の人との仲を深めていくにはどの背景を、どの問題を、どういった提案と解決を提示しようかなと考えるのです。この考え方、これまでの自己紹介にはなかったと思います。
これができると、経理部の戦力として認識されます。交際相手が見つかるかもしれません。スタートで大きく差がつくのです。
まとめ
「日本で一般的に行われる自己紹介」と「ストーリーテリングの自己紹介」の違いをご理解いただけたでしょうか。
仕組みがわかれば作れます。これを何個か用意しておけば、初対面で、その相手に合った魅力を伝えられますから、人脈が拡大していきます。
今後出会う人には、ストーリーテリングで歩み寄ってください。今までになかった反応が返ってきます。
では結びに、例として、私、佐藤はじめの自己紹介をさせていただきます。対象はもちろん、あなたです。
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改めまして、プレゼンテーション講師の佐藤はじめです。オンラインと時々対面でビジネスに生きる“伝える力“について教えています。
仕事である程度の役職になれば、人前で話す機会が増えていきますが、残念ながら多くの会社員にはプレゼンテーションを学ぶ機会がありません。国内に教えられる環境が少ないからです。パワーポイントがないプレゼンテーションが不安でしたら、黄色信号です。
あなたは今、人生が変わる大きな武器の一つを、手に取ろうとしています。それは剣ではなくペンです。効果的に適切に文章を紡ぐ力を手にすれば、あなたの言葉は進化します。相手への印象が変わります。さらには、キャリアに新しい道が登場します。
プレゼンテーションの学びは奥深いですが、この記事を最後までご覧になってくださった勉強熱心なあなたなら、まだまだ吸収していけると確信しています。これからもよろしくお願いします。
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こちらの記事は動画化もしております。