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コミュ力って何??
今回はコミュニケーション能力の話です。コミュニケーション能力、高めたいですよね。日本の総労働人口と、コミュニケーション能力を高めたい人は限りなくイコールだと思っています。
なぜなら、求められているからです。
経団連の調査によると、企業が新卒採用の選考にあたって最も重視した点は、『コミュニケーション能力』です。それも16年連続です。
そのほかの重要項目は、「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」だそうですが、この4項目は年度ごとに順位が入れ替わります。企業はダントツでコミュニケーションの力を欲しています。
中途採用に関するレポートはありませんでしたが、想像するに、これらの項目に実務経験や専門性が加わるのでしょう。一緒に働く仲間は、まずはコミュニケーションができてしかるべき、と考えているのが日本社会です。
では、ここで考えてみましょう。
手に入れたら職に困らなそうな無敵の力『コミュニケーション能力』って一体なんでしょうか。
2位から5位はすぐわかると思います。主体性は「自ら能動的に行動ができる心構え」、チャレンジ精神は「手間や恐怖を気にせず突進できる勇気」、協調性は「周囲と歩幅を合わせるチーム活動での調整力」、「誠実性」は「誤魔化さず偽らない清い心」です。
では、第一位の『コミュニケーション能力』を説明できますでしょうか。
これを方々(ほうぼう)の社会人に聞くと様々な答えが返ってきます。聞く力、話題が豊富、忖度できる、空気読む、共感する、以心伝心などなど、枚挙に暇がありません。
言葉に対する共通の認識がないから、浮遊して掴み所のない概念として追い続けてしまっているのです。16年です!16年も探求しているのにいまだによく分かっていないんです。分からないから鍛えられない。勿体ないです。
なのでここではコミュニケーション学によるアカデミックな解答をお教えします。
コミュニケーション能力とは、「効果的にかつ適切にコミュニケーションできる能力」です。
「効果的に」とは、無駄なく寄り道せず伝えられているかという意味です。話には最短ルートの明快さが必要です。
カレーの名店が2つ目の信号を右折したらすぐのところにあるのを友達に伝えようとするときに、どう説明しますか?
と言いませんか?
非論理的に話す人は、
と言うんです。
そんなバカな、と思うでしょうが、カレー屋へ案内するはずが、ぶらり街中散歩をおすすめしちゃう人がいるんです。
「効果的にかつ適切にコミュニケーションできる能力」の「適切な」は、その場面に適した語彙を用いて表現をしているかどうかです。
なんとか、カレー屋に着いても安心してはいけません。言葉の引き出しが少ない人がカレーを食べるとなんて言うかご存知でしょうか?
「このカレー、ヤバイ!」です。美味しいのは察しますが、その人はきっと何を食べてもヤバイで表現します。時に、、、「ヤバイ」「マジヤバイ!」「ヤバっ!!」と言い方でバリエーションを出すかもしれませんが、それは適切な表現ではありません。
以前、カレー屋さんで「このカレー、クソやばい!」と聞いた時は、めまいがしました。カレーに対しては絶対に言ってはいけないヤバい修飾語ですね。友人同士ならまだいいかもしれません。ですが、取引先の方と食事に行ったら、両家の初顔合わせの食事会だったら、「ヤバい」じゃヤバいんです。
「香辛料に拘っているから鼻に抜けるインドの香りと、後からくる舌の痺れが病みつきになるんですよね」くらいのコメントが言えたら及第点でしょう。初顔合わせにカレー屋さん、私は嫌いじゃありません。
コミュニケーション能力は、この二つ、回り道をしない論理とその場に適合する語彙の選択が要素です。
日本では、忖度や空気を読むなどの受動的な態度を重宝する文化がありますが、本来の意味でのコミュニケーション能力とは、「自発的に説明する力」ですから能動的なんです。
コミュニケーションの本質
ここから、コミュニケーションの本質に迫って説明します。よく、コミュニケーションを「言葉のキャッチボール」と例えられますので、キャッチボールを例にお話ししますね。キャッチボールには投げる人と受け取る人がいて、交互に入れ替わりますよね。それぞれ話す人と聞く人を示していて、ボールは伝えたいメッセージです。
順調にメッセージ交換が行われていれば問題ありませんが、キャッチボールですから、取れずに落としてしまったり、ボールが明後日の方向にいってしまったりもします。
さて、問題です。ボールがキャッチできなかったら、「ごめん」と謝るのはどっちでしょうか。
はい、そうですね。投げる方です。上手く投球できなかったのをお詫びします。野球のピッチャーとキャッチャーの場合も、捕球できなかったら「ワイルドピッチ」と言ってピッチャーに原因がある用語で表します。「ワイルドキャッチ」とはいいません。
コミュニケーションも同様です。伝わらなければ謝るのは話し手です。会話の責任は話者にあるんです。
「ちゃんと聞いてないのが悪い」とか「私はそんなつもりで言っていないのに勘違いするな」とかそんなセリフは誤りです。
とはいえ、忖度しないと仕事にならない、日本人はオモテナシだ、察するのが大切だと思っている方もいるでしょう。そんな「もやもや」のためにダメ押しします。
そもそも、「コミュニケーション」って永遠にカタカナ表記ですよね。無理やり日本語に訳すと、「意思の疎通」なんて辞書には書いてありますが、それもわかりにくい。疎通は「途中で妨げられずに通ずること」と辞書には書いてありますが、「通ずる」と言われると責任が話し手なのか、受け手にあるのか、確かに曖昧です。
ですがこれ、英語で考えると理解できるんです。
「コミュニケーション」改め、「Communication」の動詞は「Communicate」です。意味は「伝達する」「伝える」その他に、「感染させる」「病気などがうつる」です。
主語は話す側にあり、尚且つそこには複雑な意味はなく、ただ、メッセージやウィルスが無機質に移動するだけなんです。それが名詞の「Communication」になるだけです。学術的な訳は「メッセージ交換のプロセス」です。発信して、受信してを繰り返す、その経過がコミュニケーションです。
相手の語気や表情から真意を読み取って、気を遣いながら関係を構築するのがコミュニケーションではありません。相手の捕りやすいボールを投げる。受け取って、また捕りやすいボールを投げる。それがコミュニケーションです。
先ほど説明したコミュニケーション能力は論理と語彙が重要だと書きました。コミュニケーションは捕りやすいボールの投げ合いですから、論理と語彙を磨いて制球力、コントロールを高めれば、相手が欲しいところにズバッとおさまるボール投げられるように、効果的に適切にメッセージ伝えられるようになるんです。
コミュニケーション能力の高め方
最後に、論理と語彙の鍛え方、すなわちコミュニケーション能力の高め方について解説します。一番効果的な方法は、本物のプレゼンテーションの実践です。“本物の“とは、パワーポイントのスライドに語らせて、アニメーションのテクニックを競う発表会ではなく、言葉で語る手法を指します。
テーマを決めて、伝えたい内容を整理して、言葉にして、文章にして、推敲して、覚えて、披露するのです。マイクロソフトのアプリを使うなら、ワードを立ち上げましょう。ビジュアルを作るのは最後でいいです。
私が作るYouTubeチャンネルも映像部分は最後に制作して語りに合わせて載せているだけです。恥ずかしながら、動画編集がお粗末なのは自覚しています。これからがんばります。そんな私ですが、プレゼンテーションで結果を出し続けています。
それが、プレゼンテーションスキルがパワポスキルではないのを証明しています。スクリーンを見ずに聴衆を見るからメッセージが届いたと確認できるんです。
欧米では、大昔から、コミュニケーションスキルを伸ばすためにプレゼンテーションスキルを伸ばしています。新卒社員に求める能力の第一位も「コミュニケーション能力」ではなく、「プレゼンテーション能力」です。
コミュニケーションもプレゼンテーションもほとんど同じですが、プレゼンテーションスキルの方が狭義で、伝える技術に特化した表現です。この思考の違いがビジネスにおいてのパフォーマンスにつながります。本物のプレゼンテーションをしましょう。
初心者であれば、「さあ、まずは300文字、文章を書いてください」と言われたら戸惑うでしょう。文章を作成するのも話すのも同じです。論理と語彙の知識が浅いと、ペンが、キーボードを叩く指が、進みません。
最初は大変だと思いますが、まずはプレゼンテーション作りの順番を変えて、原稿作成を試みてください。
まとめ
今回もかなり大切な領域についてお話ししました。巷で話題の「コミュニケーション能力」とは効率よく伝えるための「論理」と、適切に表現する力である「語彙」です。元来の「コミュニケーション」は伝達を意味する無機質な単語で、忖度や空気を読むといった性質ではなく、メッセージ交換のプロセスでしかありません。
そして、私たちのコミュニケーションの責任は話し手にあります。だから、本物のプレゼンテーションの経験は、力を養う糧になり、気がつけばコミュニケーション能力が高くなっているというわけです。
概念の意味を正しく理解して、正しい方向に学習していきましょう。
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