思わず言葉に詰まる質問
以前受講したLGBT研修は、印象的な2つの質問で始まりました。
同性愛をカミングアウトしている講師が、最前列に座っていた男性に話しかけます。
「突然ですが、あなたは男性が好きですか?それとも女性が好きですか?」
ご想像のとおり私佐藤も一番前に陣取って視線を投げかけていましたが、質問されたのは隣の方でした。
おそらく、左手薬指に指輪が光っていない人には”万が一のリスク”があるからだと想像します。
男性は答えます。
「えっ?えっと、女性が好きですけど」
講師はもう一つ重ねます。
「そうですか。あなたは見たところ男性で、女性が好きなんですね。では、それはなぜですか?」
「えっ?なぜって、、、それは、、、」
「思わず言葉に詰まってしまいますよね。失礼しました。今日は皆さんにLGBTについて勉強してもらうのですが、その前に私たちが特別ではないところから説明いたします」
色んなセミナーを受けてきましたが、特に衝撃を受けたイントロでした。
席に座って受けたのでビフォーコロナの時代です。
少なくとも2019年以前ですが、鮮明に思い出せます。
もしも私に訊かれていたら、恥ずかしながら同じく言葉に詰まっていたでしょう。
異性が好きな理由。
あなただったらどう答えますか?
講師側からすると、「それが普通だからでしょ」とか「当たり前じゃん」などの教養ゼロの回答が面白いのかもしれません。
「では、同性愛者の私は普通ではないのでしょうか?」とつなげやすいですからね。
多少の知識のある人も「動物としての種族保存本能があるからです」と答える程度です。
ですが、その本能が存在するのはなぜですか?と問われると答えられない。
哲学の入り口が見えてきましたが、講師の解答はシンプルでした。
「たまたま、DNAがそう命じただけ」
単純作業が得意なのも、パクチーが好きなのも、左足でボールを蹴るのも、低い声が出るのも、女性が好きなのも、そういう遺伝子配列を持っていただけというわけです。
皆さまざまな個性を持っていて、私たちの普通や常識は単なる多数派が先行していただけで、いつまでもそのバランスとも限りません。
同じ特徴を持った人たちだけで集まってビジネスをしていては偏った商品やサービスになってしまうため、革新は生まれにくい。
だから多様性(ダイバーシティ)推進を掲げて比較的少数だった女性管理職や障がい者雇用、性的少数者に注目が集まっていたのですが、ここ最近はダイバーシティ&インクルージョンとしてマイノリティの個性や価値観を許容していく流れに変わってきています。
表面の情報だけでなく、個々の違いを当然と理解してチームを組む考え方です。
私たちの違いはそれこそDNAの配列くらいですので、アンテナを高く持って古い考えをアップデートしなくてはなりません。