「気候変動から逃げている」
気候変動サミットでの各国首脳の発言を受けてのグレタ・トゥンベリさんの台詞です。
痛烈で過激な口撃が毎回話題になる方です。
彼女からは温室効果ガスの知識以外にも学べる側面があります。
それは、雄弁な話し方です。
今回のサミットではそれぞれの国の代表がお互いに牽制し合いながら、CO2を2030年に半減させる目標を表明しました。
ニュースを聞くほとんどの人は世界の代表が掲げる目標だから、達成すれば地球は持ち堪えるような印象を受けるでしょうが、彼女は反論します。
「今後10年間で温室効果ガスを排出量を半分にしても、世界の気温上昇を1.5℃以内に抑えられる可能性は50%しかありません。IPCC(国際的な研究機関)が出した最も良い試算でも、67%です。」
彼女がメディア取り上げられるときは、「私はあなたたちを許さない!」とか「大人は何も分かっていない!」などの挑発とともに記事になります。
ですが、彼女のスピーチは公のデータに基づいた武装をした基本に忠実な構成です。
刺激ある言葉と説得するデータを用いたスピーチは、人の心に訴えかけるプレゼンテーションに違いありません。
それから、間違いなく彼女のスピーチは作り込んでいます。
印象的な始まりで、背景を語り、問題点を指摘し、解決策を示し、未来を語ります。
アドリブだけでは用意できない、計算された論理の王道パターンです。
破天荒に見えるかもしれませんが、文章で見ると冷静で賢い性格が分かります。
きっと、メディアに切り取られた姿と実際に目の前で見る姿とではギャップがあるのではないかと想像します。
ご参考にNHKのHPに載っていたスピーチ文を貼っておきます。2019年の有名なスピーチです。
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/23238.html
主張の強さの秘密
彼女はアスペルガー症候群を公表しています。
白黒つかないのは我慢できない個性で、足元の経済と地球の未来を天秤にかける対応が、グレーに見えて耐えられないのでしょう。
だからこそ、環境保護が全てと立場を明確に維持でき、強い論調で表舞台で発言を続けられます。
持続可能性は今世界が考えている経営テーマの一つですが、環境を守ろうとするほどにコストはかさんで利益効率が悪くなります。
一方で環境を無視すればやがて競合からマイナス目立ち方をして競争力を欠いてしまいます。
どのタイミングでどこまで対応していいかの判断がつかないから曖昧になり、問題を先送りにしていたので、彼女の声がカリスマ性を持ちました。
彼女の性格の特徴を指摘しているわけではありません。
立場を明確にすると主張が強固になる例として取り上げました。
世界を動かしていく人間は発言力があります。
彼らは忖度や協調だけでなく、論理と強い意思を持っています。
受け身ではなく発信で注目を浴びる姿は魅力的ではないでしょうか。
環境問題はもとより、雄弁な話し方についても深く考えるきっかけをくれる人です。